シルバーモンスターの逆襲

崖っぷちプログラマのプログラム以外の話

国境の南 太陽の西

昨晩、村上春樹の同小説を読み終えた。先週「色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年」読んで、今月(と言うか今年、と言うよりもこの10年、15年で)2冊目である。

この本はずっと持っていて「多崎・・・」を読んでからさらに村上作品が読みたくなり、実家から持ってきたのであった。学生の頃ちょっとした村上ブームがあって、何冊かもっていたのだが、持って帰ってきた本は「風の歌を聴け」「1973年のピンボール」、「羊をめぐる冒険(上)(下)」などがあり、その一冊に「国境の南・・・」があった。しかしこの本は全く読んでおらず、しおりに「1996年のカレンダー」が付いていることから16年間放置された小説だった。

月曜日に読み始めて通勤電車の往復1時間強と家と昼休みの3時間弱程度で読み終えた。(後でググったら3時間で読み終えたと言う人がいたが、自分には無理だな。)

 

さて以下ネタばれ注意

 

~まずはあらすじから~

主人公のハジメくんは証券マンの一人息子として育つ。小学校高学年の頃、自宅の向かいに島本さんと言う小児麻痺の影響で左足の悪い同級生の女の子が引っ越してくるのだが、家の近くに住む生徒が転入生の面倒を見ると言う学校のルールに沿って彼女の面倒を見ることになった。お互い一人っ子と言うこともあり意気投合し、多くの時間を彼女とともに過ごす。それはお互いが一人っ子である吸引力のようなもので、中学校にあがるとハジメくんの家族は引っ越しをして島本さんとは違う中学校に通うことになるが、ハジメくんはしばらく島本さんに会うために自宅に通う。しかしわざわざ島本さんの自宅に通っている自分に違和感を覚え、島本さんの母親の目も気になりだし次第に足が遠のいていくのだった。

高校生になって共産党員の娘であるイズミと付き合う。彼女のことは好きであったが、イズミとの間には大きな壁を感じ、高校を卒業する前辺りからイズミを介して出会ったイズミの従姉妹とお互い好きでもないのに肉体関係を持つ。それはやはりお互いが一人っ子であり吸引力の様なものがお互いを求めていた。

これを知ったイズミは大きなショックを受け、大学受験に失敗、地元の無名女子大に受かるものののちに廃人同然の様な人間になってしまうことがわかる。

彼は大学を卒業して、教科書をつくる出版社に勤める。

ただもくもくと仕事をするだけで何の想像力もいらないつまらない仕事だと感じ、不満をも持っていた。そしてそれまでも何人か女性と付き合いもしたが、心の中で常に島本さんを思い、イズミはどうしているかを案じていた。

 

そんな日々を過ごす28歳の時、彼は渋谷の街で島本さんにそっくりな人に出くわす。

サングラスを掛けてうまく顔を伺えないが、足の引きづり方が島本さんではないかと言う思いを強くさせる。しかし年月も経っていることから自信が持てず声を掛けられない。ずっと彼女の後をつけたが、彼女がタクシーに乗ろうとしたところで、何者かに肘を掴まれ、「これ以上彼女の後をつけるな」と諭され10万円の入った白い封筒を渡される。

 

何年かして彼は建築会社社長の娘由紀子と結婚をする。自分が今の仕事に満足していないことを娘から聞いた義父からうちの会社に転職しないかと言われたが、建築業は今の仕事よりもっと自分には合わないと言って断る。しかし彼の父親からの提案で融資を受け、自分が作りたかったジャズバーの経営を青山界隈で始めた。店の経営は順調に行き、雑誌にも取り上げられるほどになった。

雑誌を目にした中学・高校時代の友達などが現れ、うちの一人からイズミが豊橋で一人暮らしをしていて、表情のない顔で近所の子供達からは怖がられていると聞かされた。

日が経つにつれて旧友の友達は来なくなったが、最後の旧友の来客として島本さんが現れる。島本さんにはこれまでのことや、今どこに住んでいるのかなどなど聞かないで欲しい、と言われる。前に尾行をされていたことも知っていて、なぜあの時、声を掛けてくれなかったのか?と言われるが、お金の渡した男に関しては聞かないでくれと言われた。

さらに島本さんは足を引きずっていなかった。数年前に手術をしたとのことだった。

また、これまで働いたことがないらしく、高価な服や装飾品を身にまとっているが、収入などどうしているのかも謎であった。

 

島本さんはしばらくハジメくんの店に定期的に訪れるが、川の話をしていたら、「そのような川はないかしら」と島本さんは言いだした。

大きくて流れが速くて海に近い川であった。

ハジメくんは学生時代に寝袋かついで日本を一周した時のことを思い出し石川県にそのような川があることを伝えた。

島本さんはその川に連れて行って欲しいとハジメくんに懇願し、二人で飛行機とレンタカーでその川に行くことになった。川で散歩していてたら彼女がカバンから小さな壺を取り出し、そこに入っていた灰を川に流し、壺を足元に穴を掘って埋めた。彼女曰く去年彼女が生んで生後1日で亡くなった赤ちゃんの遺灰と言うことであった。石川の小松空港にレンタカーで帰る途中、彼女の容体が悪くなる。彼女の顔は蒼白し、目は死の底を見つめたような目をしていた。彼は彼女が病気であることを察し、彼女のカバンから薬を取り出し、水がなかったので周辺に残っていた雪を自分の口に含ませ、口移しで水を飲ませた。

 

後日、彼女が店に来ていて彼と話をしていると、別の店舗から呼び出しをくらった。とりあえず用事を済ませ、彼女のいる店に戻ると、彼女は置き手紙だけをして帰っていた。そこには「多分しばらく会えません」と。

それから何カ月も過ぎ、彼の島本さんに対する思いは一層激しくなる。

6か月が過ぎ、久々彼女の姿を見たときには二人で箱根の別荘に行こう!と言いだした。彼女は小学校の時に二人で聞いた大事なレコードをハジメくんにプレゼントする。

そして彼らは愛車のBMWを飛ばして箱根の別荘に向かう。

箱根に向かう途中彼女は言う「今、私があなたのハンドルを切ったら、私たちどうなるかしら」速度は130kmから140km出していた。「確実に死ぬだろうね」

 

箱根の別荘で島本さんもらったレコードを聴きながら、彼女は彼に確かめる。「私には中間と言うものがないの。私の全てを取るか、私の全てを諦めるかのどちらかなの」

彼は決心をしていた。「今の家族を愛しているが物足りない。君が必要なんだ」と。そしてお互い長いこと待ったことから、一晩掛けて愛を育むのであった。

 

しかし朝、目を覚めるとなぜか彼女はいない。プレゼントされたはずのレコードもない。仕方がなく東京に戻ると、妻の由紀子が全てを悟ったように、私と別れるかどうか問いただしてきた。

 

しばらく経って、オフィスの引き出しに閉まった10万円の入った封筒を確認したら、なぜかなくなっていた。

また車を運転している時にまた島本さんにそっくりな人を見かけ慌てて路中をしたが、その間に見失ってしまい、よくよく考えたら悪い足は逆の足で、しかも彼女は手術をして足を引きずることはなかったはずであった。そんな自分に落胆して信号の柱にもたれかかっていると目の間にタクシーが赤信号で止まり、後ろの座席からイズミがこちらを見ていた。こちらを見ているその顔は表情がない顔というよりは表情と言うものを持たない顔で目の前でガラス越しにこちらを見ていた。それを見た時、イズミはまだ自分のことを待っているんだと思った。

そして彼は家に帰り、由紀子との結婚生活を続けることを決意し、決定する権利を持てない彼はそれを彼女に確認する。

そして彼は自宅のテーブルの上で顔を手で覆い雨に降られた海を思うのであった。そこへ誰かが彼の背中に手を置いた

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とこんな感じです。(記憶だけで書いているのでちょっと間違っているかも)

ちょっと長くなったので考察はのちほど。

 

国境の南、太陽の西 (講談社文庫)

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国境の南

国境の南